カチオン綿という言葉についての誤認が多い理由。

以前にも同じようなテーマで書いたことがありますが、なかなか難しい内容なので再び書いてみたいと思います。

繊維の業界で仕事をしていると時々登場するカチオン綿。

カチオン化綿といったりもします。

簡単に説明すると文字通りカチオン化した綿のことです。

カチオンとは陽イオンのことで原子が電子を放出して正の電荷を持った状態のことを言います。

つまり、綿に加工を加えて陽イオンを保有した状態にすることが綿のカチオン化ということになります。

なぜそういうことをするのかといいますと、陽イオンは陰イオンと反応して結合するのでカチオン化された綿は陰イオンを保有している染料で染められるようになるためです。

綿を染める染料として業界でよく知られているのは反応染料と呼ばれるものです。

この反応染料というのはその名の通り化学反応で繊維を染色するための染料です。

この場合の化学反応は、綿繊維のセルロースに含まれる官能基である水酸基に反応する活性基をもった染料をセルロースと共有結合させて染着するということを指しています。

シンプルにいうと、染料をセルロースと共有結合させる染色ということになります。

すでにちょっとややこしいので簡単にまとめます。

通常の綿の染色 > 繊維と染料を共有結合させる
カチオン化綿の染色 > 繊維と染料をイオン結合させる

つまり通常の綿とカチオン化した綿では染め方が違うわけです。

この性質を利用して通常綿とカチオン化綿をブレンドした糸を染め分けることで、霜降り調のメランジに染めることが出来るわけです。

このカチオン化綿について、時々問題が起きます。

繊維の業界にはカチオン染料という言葉があります。

これは主にアクリルなどを染めるために用いられる染料で陽イオンを保有しており、イオン結合によって陰イオンを保有した繊維と染着します。

イオン結合というのは正電荷と負電荷が反応することによって起きる結合なので、正電荷の繊維と正電荷の染料は反応しません。

つまりカチオン化された綿はカチオン染料とは結合しません。

ところがカチオン化綿のことをカチオン染料で染まる綿だと誤認している人が多く、実際にカチオン染料で染めてみたら染まらなかったという経験をされている人に時々出会います。

繊維業界においてはカチオン染料という言葉自体はおそらくカチオン化綿という言葉よりも広く知られていて、アクリルを染める染料だということもそれなりに知っている人が多いのだと思います。

そのためにカチオン化綿もなんとなくアクリルの染料で染まる綿なんじゃないかな?と思ってしまう人がいるわけですね。

間違えないようにしましょう。

カチオン化綿はカチオン染料では染まりません。

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