他社の商品をコピーするとか仕入先を飛ばすとか、いまだにそういうお話は尽きないものですね。

年の瀬が迫ってきて当社もいよいよ繁忙期のピークに差し掛かってまいりました。

引越しに伴ってこの夏に導入した撚糸機もおかげさまでフル稼働中です。

本生産用の撚糸機を導入したことで自社商品の生産効率が上がり全体的に納期を短縮出来ていて、特に中量生産のデリバリーで従来よりも高いパフォーマンスが出来ているなと手ごたえを感じています。

当社の撚糸機は当然ながら自社の糸を生産するためのものなのですが、それとは別に撚糸だけを請け負って欲しいという仕事のお話も色々と頂いております。

当社の撚糸に関するノウハウなどをご評価いただいてのことかと思い、非常にありがたく感じています。

ただ、こういったお話の中には従来他社に撚糸依頼していたものを当社に振り替えて依頼したいというようなパターンが多く、その中には元々知り合いの工場さんが請けていた仕事が含まれているケースもあり、仕事をお受けするべきかどうか判断が難しいです。

その他、イタリア糸などの海外糸をコピーして当社設備で安く作れないかとか、他社には撚糸だけ頼んでいたけれども当社には原料の購入から撚糸まで一貫して頼めないかといったようなお話まで様々ですが、現状のところ自社の商品で手一杯の時にはなかなかそうしたお話をお受けすることが出来ていません。

特に他社よりも安くできないかというお話については基本的に出来ないことがほとんどです。

これは当社の技術が優れているから安売りしたくないというような意味ではなく、撚糸を専業にしておられる工場さんに比べて当社の設備は規模も小さく出来る仕事も限られているので、加工単価が他社さんに比べて高くつく場合がほとんどだからです。

さて、

撚糸機を保有して以降、もともとお付き合いのあった撚糸工場さんや新たに知り合いになった工場さんと撚糸加工について会話する機会が増えまして、やはり聞こえてくるのは近年多くの加工場が廃業しており産地の生産キャパシティがどんどん減っているというお話です。

基本的に加工場さんの廃業は仕事が減っていることに起因しています。

けれども近年はそれ以外に高齢化や後継者不足もしくはもっと儲かる異業種への鞍替えなど、受注量の減少以外の理由で加工場さんが廃業するケースが増えています。

受注量の減少よりも生産キャパシティの方が減少する場合、需給バランスだけを考えると加工の単価が上がるのが道理かと思いますが、現場の方々に聞く話ではそれもなかなかかなわず、廃業した他社で¥150/kgでやってもらっていた仕事は別工場に振り替えるときにも基本的には¥150/kgでオファーされます。

最終商品の販売価格が決まっているのでそれも仕方が無いことかとは思いますが、残存者利益というものがなかなか得られない状況では、必死になって生き残りに尽力している工場さんがいつまでたっても報われないので、少しずつでも産地全体の加工賃ベースが上がっていくことを期待します。

そんななか、いまだに「他所は¥150/kgでやってくれてるけど、¥140/kgならばそっちに振ってあげても良いよ」というような値切り交渉もまだまだ沢山あって、末端の加工場に十分な利益を分配しようという動きは相変わらず少ないです。

こういうのはまだマシな方で、とある糸メーカーが原材料+撚糸加工賃込みで販売しているものに対して、それを購入している客先がその製造ルートを調べて原材料メーカーと撚糸工場に直接コンタクトするというようなケースもたまにあります。

糸メーカーは原材料費+加工賃+自社のマージンで販売するので、購入する側は原材料を自社で仕入れて加工業者に加工賃を支払えば糸メーカーのマージン分安く手に入れられるという考え方です。

例えば購入する側が独自に似たような原材料を仕入れて、仕入先の糸メーカーとは別の加工場さんで加工する(つまりコピーする、というかパクる)ならばまだしも、もともと購入していた糸メーカーが仕入れている原材料屋さんにコンタクトを取って直接仕入れ、同じく糸メーカーが加工依頼している撚糸加工場に直接コンタクトを取って加工依頼するというようなケースさえあります。

他社の商品をコピーして安く作るという商慣習は世界中どこでもどの業界でもあることなのである程度仕方が無いことかと思いますが、仕入先の製造ルートに直接コンタクトをとるというのはいかがなものか。

完全なマナー違反だと思います。

撚糸工場の集まる産地を回っていると、そういったことが起きているという話を今でもよく耳にします。

ただでさえ産地が疲弊しているというのに、いまだに足の引っ張り合い。

こうなると今度は製造ルートに直接コンタクトされた側の糸メーカーが客先を飛び越えてその向こう側の顧客に直接コンタクトを取って商品を販売し始めます。

やられたらやり返すみたいなセリフが何年か前に流行りましたが、斜陽産業の代表選手のような繊維の業界でこんなことをやっていても全然ドラマにならないですね。

一旦この戦いが始まってしまうと、いわゆる切った張ったになってお互い疲弊してしまって結局どちらも得をしなかったりします。

過度な平和主義でお互いの領分を荒らし過ぎないようにしても切磋琢磨が無くなってよくないので、ある程度節度を守って正々堂々と競争すればよいのに、と思うのは綺麗事なんでしょうか。

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