我々の従事する繊維産業は自他共に認める斜陽産業です。
国内産地の生産性は低く高齢化率も高くて後継者不足が深刻です。
アジア各国の競合他社に市場をほぼ独占されていて、アパレル製品の国内製造品比率は市場の約3%ほどだとされています。
そんな業界でも世の中で声高に言われているサスティナビリティ(持続可能性)にいかに貢献するかというようなことを話題にしたりします。
けれども大抵の場合オーガニックやリサイクルなどの素材を使った商品企画を検討することに終始するばかりで、それ以上の議論に発展することはほとんど無いです。
私自身、自社を含めた業界が生きるか死ぬかの時に世界の持続性のことなんてかまっている場合か?という思いを抱えながら、それでも社内のミーティングで持続可能性について話をします。
先日もSDGsについて我々の普段の取り組みが当てはまるような項目が無いか一度調べてみようというような話をしたところです。
SDGs(エス・ディー・ジーズ)とはSustainable Development Goals(持続可能な開発目標)の略称であり、国連によって定められた2015年から2030年にかけて世界が達成するべき目標のことで、17分野169項目に渡って細かく定められています。
議論が国連ベースで行われているので、発展途上国への支援によって世界の不平等を無くしていこうというところに軸足を置いた項目が圧倒的に多いですが、発展途上国=弱者ということならば我々の産業も弱者であることは間違いないので出来れば誰かお助けいただけるとありがたく思います。(笑)
国連の取り決めとなると政治的な活動にすぐさま影響するもので、日本の各省庁もここ数年SDGsに絡めた補助金や助成金などの予算をジャブジャブとばら撒いていたりして、結局税金の無駄遣いの大義名分なのかとがっかりする点もありますが、良くも悪くも大きな動きになりつつあって世界で議論が高まっていることは確かです。
ともかく、現状がどうであれ我々でも世の中のお役に立てることがあるのならば、やらないよりはやる方がよいということで会社としても関心を寄せていこうと思っております。
ここ最近社員や外部の方たちとお話しする際に、「サスティナビリティや社会貢献について、個人的に何か取り組んでいることや興味を持っていることはありますか」、ということを時々聞くようにしています。
大抵の場合は「特にないですね。。。」という答えが返ってきます。
改めて問われると、胸を張って「活動してます!」といえるような方はほとんどおられない。
けれどもこれが普通なんだと思います。
特には何もしていないけれども、レジ袋を自前のショッピングバッグにしていたり、ゴミの分別をしっかりしていたり、多少穴が開いた服でも気にせずに着ているというだけでもこれで十分立派な活動だと私は思います。
企業や政府がどれだけ見栄えの良いお題目を掲げようとも、日常生活に根ざした活動つまりは文化や習慣として定着しなければ無意味です。
そういう意味では何気ないことをちゃんと出来ているということがまずもって大事なのではないかと思います。
そこで自社に目を向けたとき、一体我々に何が出来ているのか。
当社の商品はその殆どが天然繊維で構成されています。
では一体何パーセントが天然繊維で構成されているのか、実情を捉えてみようと思い数字を洗い出してみました。
直近の1年、つまり2019年2月1日から2020年1月31日までの期間に当社が自社で企画・製造して販売した全ての糸のうち天然繊維の占める比率は96.1%で、その他ポリエステルなどの合成繊維やテンセル・キュプラなどの再生繊維が合計で3.99%でした。
リネン100%やコットン100%、リネンウールやコットンシルクなどの複合素材も含めて96%が天然繊維。
もうこれ十分立派な数字なんじゃないだろうか。。。
ただし、当社では海外のアパレル向けにニット付属糸としてストレッチの糸を代理販売しているものなどがあり、またそれ以外にも国内の関係先から撚糸だけお受けしている仕事などでは合成繊維やラメ糸を取り扱う場合もあるので、それら全てを織り込んで計算しなおしてみたところ、天然繊維の締める割合は86.46%でした。
まぁ、これも悪くない数字なのではなかろうか。。。
それ以外に当社では丸編みの生地の販売も行っており、こちらは天然繊維が100%でした。
天然繊維を着る、ということが持続可能性にどれほど貢献するのか数字的な分析は必要かと思います。
けれども、世の中にプラスチックのストローをやめて紙製にする動きなどがあるのであれば、そもそも天然繊維を主に販売している当社はそれと違わない事業形態になっているのではないかと思います。
今後商品構成の中にオーガニックやリサイクルの素材をどのくらい織り込んでいくのか、はたまたそれ以外に社会貢献できるような要素を盛り込んでいけるのか、社内でも検討を進めることになるかと思います。
けれども現時点での我々の事業について、少しは胸を張ってもよいのではないかなという気持ちになりました。