糸を売り込みにニューヨークに来ています。
今回いろんな客先をまわって分かったことですが、こちらのアパレル企業では日本人がかなりたくさん活躍しています。
10年ほど前から毎年この街に来ていてアパレル関係の職場でたまに日本人の方を見かけるなとは思っていましたが、今回は大げさじゃなく毎日必ず一人以上の日本人と仕事の話をしています。
初日は現地で個人のブランドを立ち上げたデザイナーさん。
二日目はショップの店員として働きながらプリントTシャツをデザインしているデザイナーさん。
三日目は大手のアパレルで生産管理に携わっている方。
四日目は超大手のアパレルのデザイナーさん。
ニットメーカーの営業さん、生地売りの営業さん。
明日も大手セレクトショップのディレクターの方に会う予定です。
皆さん日本で生まれて途中から何らかの理由でこちらに住んでいる人たちです。
日本からの輸出品を売り込むために駐在している人は別として、私の出会ったほとんどの人が日本人だから採用されているわけではなく個人の能力を評価されてその職場におられます。
日本語が話せるから日本向けの輸出入を担当しているとかではなく、現地の人と同じポジションで仕事をこなしている。
中には日本人の我々に対して自分が日本人であることをオープンにせずにプレゼンに参加しているデザイナーさんもおられました。これも意図的にオープンにしないのではなく、別段それをいう必要もないからそうしないのです。
私が拙い英語で必死に説明しているのを真剣な顔で聞いて時には英語で質問をしてくれていたデザイナーさんがいました。
ミーティングも終わりに近づいたとき会話の流れでその方が日本人であることがわかり、しかも当社の近所の出身の方だとわかってびっくりしましたが、ミーティング自体はそのまま英語で続行されました。
様々な人種の人たちが暮らしている街なので、アジア人に見えてもアメリカ生まれでアメリカ育ちの人なんて街中のどこにでもいます。
そんな環境のなかでは日本から出張で来ているのか現地在住かなんてわからないし誰も気にしていない訳です。
まったくの想像で書きますが、日本人の海外での活躍ぶりを雑誌やテレビの企画にする場合、日本人のきめ細やかな心配りや協調性が海外で評価されて云々となったりするのかなと思います。
もしくは海外にまで出ていくからにはかなりアクティブで野心的でひときわ目立った個性を発揮している人物像をイメージするかもしれません。
私も以前はそういうイメージを持っていましたし、多くの方が想像することもそれに近いのではないかと思います。
しかし現場で働いている方々と接してみて感じることは少し違います。
彼らは就職の一選択肢としてこの国のこの業界を選んでいるに過ぎず、日本国内のアパレル企業で働く人たちとほぼ同じ感覚で話ができます。
自分は特別で人より優れた存在だと鼻にかける様子もなく自分のポジションをこなす。
日本人だから協調性があって気配りができるのではなく、他国の人もやはり協調性があり気配りができる人が多く、またそういった人が重要なポジションンを担っているケースが多いです。
先のミーティングが終わった後、帰り際に「お気をつけて!」と言っていただいたときには日本語でした。
これにしても現地のほかのスタッフの方であれば「Have a good time!」とかになるだけの違いで、相手を気遣う心配りは同じだと思います。
日本品を海外に売り込む際メイドインジャパンのクオリティが他国の商品に勝るとか、日本メーカーの生産管理だから安心安全だとかを妄信してしまうことがあるように思います。
けれども実際は他国の人たちも商品に磨きをかけているし、品質の安定性のために企業努力もしています。
もちろん日本製のもので海外で評価を受けているものも沢山あります。
みんなが対等に同じリングに立って戦っているわけです。
自分たちが日本製の商品を提案しているからといって何かしらのアドバンテージがあるわけではないし、結局はどこの国製のものかは関係なくその商品がニーズにあっているかどうかが重要なのだということ。
そんなことはわかっていたつもりでいましたが、まだまだ認識が甘かったと反省しています。これはもっと強く肝に銘じなければいけないなと今回の出張を通じて感じました。
現地で活躍する方々が周囲のスタッフと同じポジションンで対等に仕事をしている姿を拝見して、改めてその点を学ばせていただいたように思います。