久しぶりに自社ブランド以外のことについて書いてみたいと思います。
来月うちに新入社員がやってきます。
服飾の専門学校を卒業したばかりの20代の新人です。
私が今年で50歳なので、もはや親子ほども年の差がある社員が来るわけです。
さて、この新入社員をどうやって育てていこうかと期待をもっていろいろと想像しているのですが、我々がいろいろと教えるまでもなく最近ではAIに質問をすればなんでも答えてくれるとか。
ならば「基本的な繊維の知識についてわからないことがあればAIで調べてみて」とでも言っておけばよいのかなと思い、ちょっと試してみました。
チャットGTPというアレですね。
まず最初に質問したのは「超長綿とは」で、帰ってきた答えはこれです。
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「超長綿(ちょうちょうめん)」は、非常に長い繊維を持つ綿のことを指します。綿花の中でも、特に繊維が長くて強度が高く、品質が良いものを超長綿と呼びます。一般的な綿に比べて繊維が長いため、紡績の際により細くて強い糸を作ることができ、仕上がりが滑らかで高級感のある生地になります。
超長綿の特徴としては、以下の点が挙げられます:
- 繊維が長い – 繊維が長いほど、糸にしたときに強度が増し、しなやかで丈夫な生地になります。
- 柔らかさ – 超長綿は通常、手触りが非常に柔らかく、肌触りが良いため、高級な衣料や寝具に使用されます。
- 高品質 – 一般的な綿に比べて、育成条件や収穫方法が厳選されているため、品質が高いとされています。
超長綿の代表的な品種としては、アメリカの「ピマ綿」やエジプトの「エジプト綿」などがあります。これらは非常に高品質な超長綿として、特に高級なシャツやタオル、シーツなどに使用されています。
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まぁ大体あってるのかなというところ。
以前このブログでも書きましたが、
たまにはコットンのお話。超長綿という言葉の使い方。 – 東大阪繊維研究所ブログ
超長綿というのはICAC(国際綿花諮問委員会)という国際団体によって規定されており、「繊維長が1 3/8インチ以上のものを超長繊維綿と呼ぶ」とされています。
1と3/8インチなのでミリに直すと1.375×25.4mm=34.925mmということで、34.925mm以上の長さの綿が超長綿となるということですが、このあたりの情報は最初の質問から得られるわけではないようです。
さて、
超長綿の下には長綿があって、その下には中綿やら短綿なんかもあって一番下は短綿と規定されています。
しかしそれより下は無いのか?
そこでAIさんに聞いてみました。
「超短綿とは」
帰ってきた答えがこれです。
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「超短綿(ちょうたんめん)」とは、繊維が非常に短い綿のことを指します。通常の綿花から採れる繊維よりも短い部分で、質があまり高くないため、主に工業用や低価格の商品に使用されることが多いです。
超短綿の特徴は以下の通りです:
- 繊維が短い – 繊維の長さが非常に短いため、糸として紡ぐのが難しく、織りや編み込みが難しいことがあります。
- 粗さ – 短い繊維は絡みやすく、布地にすると粗い感じや肌触りがあまり良くないことがあります。
- 耐久性が低い – 短い繊維は、長い繊維に比べて強度が劣るため、製品としての耐久性が低くなることがあります。
- 低価格 – 高品質な長繊維と比べて、短繊維は比較的安価であるため、価格を抑えた製品に利用されます。
超短綿は、主に次のような用途に使われます:
- 低価格の衣料品やタオル
- ポリエステルやナイロンと混合された素材(これにより強度を補います)
- 綿のリサイクル素材(古い布を再利用する際に、短い繊維が利用されることがあります)
高級な製品には超長綿が好まれる一方、超短綿はコストが重視される製品に使われることが多いです。
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ばっちり答えが返ってきましたね。
ものすごくちゃんとした答えになってます。
しかし残念ながらこれではあまりよろしくない。
先ほど書いたようにコットンの繊維長については国際綿花諮問委員会の決めた規定を一応国際標準としていて、そこでは超短綿なんてものは規定されていないので、うちの新人にもそれに準拠した知識を身に着けておいてほしいわけです。
しかし、何かの拍子にうちの新人が「超長綿なんてものがあるのなら、超短綿もあるのかな」と思ってAIで調べてしまうと、あたかもそういうものがあるかのように説明されてしまうわけです。
なぜかというと、AIはとても賢いので文字列から想像される最適らしい回答を生成してしまうからだと思われます。
つまり「超長綿がこうなのだから超短綿はおそらくこうだろう」と推測して文章が書けてしまうわけですね。
超長綿についてはネット上でもいろんな所でいろんな人がいろんな事を言ってるので、それらを集めて最適解を生成することは簡単だと思います。
それがゆえに、よく似た言文字列である超短綿についても説明が出来てしまうわけですね。
同じようなことで三等亜麻とか四等亜麻なんて言葉についてもチャットGTPで調べてみました。
もちろんガンガン説明してくれました。
繊維業界の方でご興味がある方はぜひチャットGTPに質問してみてください。
私が試したところ、九等亜麻までは説明してくれましたが十等亜麻はさすがに無いとのことでした。
実際はというと、二等亜麻までしか規定されていません。
この一等とか二等というのはもともとフラックス原料のLINEとTOWに対応させて付けられた等級です。
LINEは主にフラックスの茎から採取される繊維長が長く上質な部分で、枝葉や根っこに近い繊維の短くて太い部分がTOWです。
茎がLINE(一等亜麻)でその他がTOW(二等亜麻)だとすると、それ以下のものはどこから採取されるのか。。。
確かにそれ以下のグレードとして、茎や枝葉から削り落とされた硬い表皮の部分を落ちワタとか再用綿と呼ぶことがあり、これを仮に三等と位置付けたとしてもそれが下限だと思います。
四等や五等なんてないわけです。
しかしAIはそれもまるで存在するかのように説明してくれます。
まずいまずい。。。
うちの新人には当面の間はチャットGTPで勉強することをやめてもらわなければいけないですね。
今回いろいろと調べてみた結果私が行きついた答えは
「こりゃ自分でちゃんと教えなきゃいけないな」
です。
なので最近繊維関係の書籍を毎日読んで勉強しなおしてます。
繊維のことを机に向かってちゃんと勉強したのは会社を初めたばかりのころ以来なので、約20年ぶりくらいにまじめに勉強してます。
いざいろんな本を読んでみると今まで間違えて覚えていたことなどもチラホラあって、今まで人に偉そうに話していた自分が恥ずかしくなったりします。
私自身はいわゆる団塊ジュニア世代で、親世代が若いころはまだまだ日本の繊維産業が華やかだったので、その時に活躍していた人たちはいろんな経験や知識を豊富に持っていました。
しかしそういった人たちはすでにほとんど引退していて、その下の世代の人たちは案外知識を継承できていないことが多いです。
私自身は父親やその他多くの大先輩たちからたくさんのことを教えてもらいましたが、これから業界に入ってくる人たちは教わる相手がいないことでいろいろと困ることも多いと思います。
なので、僭越ながら私が持っている知識を下の世代の人たちと共有できるよう、ユーチューブの動画などに残していこうかな~とも思ってます。
さすがに50歳にもなったらそのくらいのことはせんといかんのかなと。
流行りのAIさんとお話ししてみて、かなり危機感を覚えたのでそんな風に思った次第であります。