糸作りの作業としてはこういうことをやっていますよ、というわかりやすい説明(のはず。。。)

Tシャツを作るための糸は自分たちで作っています。

この「糸を作る」ということはいったいどういった作業なのかということをご説明したいと思います。

最近このブログで書いていることについて、当社の社員たちから「非常に分かりにくい」という指摘を受けたので、今回は写真を交えて出来るだけ分かりやすくするよう心がけたいと思っております。

「東大阪繊維研究所」を運営する当社ことエップヤーン有限会社では主にニットセーター用の糸を作っています。

ニットセーター用の糸といっても手芸店にならぶ毛糸玉のことではなく、主にアパレルメーカーさんたちの洋服となる工業用のニット製品を作るための糸です。

糸作りの主な工程は紡績、撚糸、染色です。

紡績とは原料のワタから糸を紡ぎ出す工程のことで、これには大規模な設備が必要なので外部の紡績メーカーさんに委託して糸を生産してもらいます。

紡績メーカーさんで生産していただく糸は主に生地糸単糸(きじいとたんし)と呼ばれるもので、これは大抵の場合原料そのものの色で出来上がってきます。

コットンやウールならアイボリーですしリネンなら亜麻色ですので、これを染めたり撚糸したりして自分たちの好みに合った糸を作っていくわけです。

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綿番手30番コーマ糸の生地糸単糸。やや黄色味がかったアイボリー。

染色も紡績と同じく大規模設備が必要なので外部の加工場さんに委託するわけですが、どんな色に染めるのかどういった染め方をするのかは当社で決めてその通りに染めてもらうわけです。

この色決めというのが非常に重要でかつ悩ましい作業です。

「あなたはどんな色がお好きですか?」という漠然とした問いかけに対して、制限時間内にはっきり答えを返さなければいけない状況をイメージしていただけると良いかと思います。

「そんなの気分によって変わりますよ」とか「色を着けるアイテムによって着けたい色は変わります」ということになるのかと思いますが、われわれ糸屋さんが自社の糸を色つきでストックする場合、お客様がどのような企画で使用されるか分からない前提で色を決めていくので、想定される様々な状況を加味しつつ色を決定しなければいけません。

この色決めはいつも非常に悩みます。

そういった意味では東大阪繊維研究所のTシャツの色を決めていくほうが幾分かやりやすいです。Tシャツのデザインや使用する素材も自分たちで全て決められるので、そこにぴったりハマる色はイメージしやすくなります。(個人的な好みで決められるという楽しみもありますし(笑))

自分たちがカラーストックしたり自社のTシャツにしたりする色を決めていくのに、雑誌の切抜きや古い布の端切れの色を参考にしたり、海外の糸メーカーの糸を拝借したり、使い古した衣類から持ってきたり、とにかく色々な方法で気に入った色を探してきます。

そうやって見つけてきた色を染工場さんに渡して見本を作ってもらい、色が決定したら染色してもらうわけです。
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染工場さんに作成してもらった色見本を当社の編み機で編み繋いだ生地です。

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全ての色が決まったら自社のカラーパネルにまとめます。

さて、ここからが当社の主なお仕事になります。

染まった糸はそれ自体でセーターやTシャツの生地を編むことも出来ますが、様々に組み合わせて撚糸することで更にその魅力が増します。

当社には2錘立ての試作撚糸機が2台、20錘立てのリング撚糸機が2台、8錘立てのリリーヤーン機が1台ありますので、それらを組み合わせて様々なバリエーションの糸を作っております。
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リング撚糸機

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色んな色が複雑に混ざり合ったような糸も作ることが出来ます。

例えば白と黄と青の3色の糸を撚糸してみたり、ネイビーとグレーとブラウンを組み合わせたりといった具合に配色でアレンジすることもあれば、コットンとリネンを撚糸したりカシミアとコットンを撚糸したり、いくらでもアレンジ可能です。

その際、少量の試作が可能な2錘立ての機械が非常に活躍します。
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最初に少しだけ作ってみて、良さそうなら何キロか作ってという具合に試作を進めていきます。

このように色んな素材を組み合わせたり、色んなカラーを組み合わせる時に技術的に非常に難しいことがあります。

それは撚糸バランス調整というもので糸の回転する力をどのように止めるかということを意味しています。

以前にこのブログでも書きましたが多少の物理や数学の知識が必要になったりしますし、知識だけあっても駄目で、異なる太さの糸を合わせる場合や、紡績時の撚り回数の違う糸同士を合わせる場合など様々なケースがある上に、同じ糸の組み合わせでも色の配色が異なれば撚り回数が異なったりしますので、様々な組み合わせに対する経験値が無いと糸は上手く作れません。

例えば同じ糸でも白とベージュを撚り合わせるのと黒とネイビーを撚り合わせるのでは、20%以上撚り回数を減らしたりすることもあります。

色々な組み合わせにとって適切な撚りバランスを見つけ出してコントロールする技術が当社の根幹の技術であり、それがあるからこそ様々な素材やカラーを自由に組み合わせたものづくりが出来るのです。

今販売中の品番HOFI-002に使用しているインド綿の強撚糸も3色の異なる色を組み合わせて撚糸したものですが、サンプル作成時と本生産時でも撚糸の回数は変わっていますし、シルバーグレイとネイビーでももちろん撚り回数を変えてそれぞれの色に合わせて調整しています。

そうすることで、型崩れしにくくて長く着られるTシャツになっているわけです。

実際にサンプル作成や本生産で使用する糸を自分たちで手にとって
、自分たちで加工しているので自信を持ってその品質をアピールすることが出来るのです。

糸作りの具体的な作業はざっとこんな感じですが、いかがでしょう?

今回は以前にもこのブログでご説明したことを写真を交えながら再びご説明しました。

前よりは分かりやすかったですか?

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