「エップヤーン雑貨店」で阪神百貨店さんのイベントに出店することになりました。
夏を快適にする糸です!!潤紡績リネンと強撚コットンでシャキシャキサラサラの糸を作りました。
リネン糸は潤紡績(Wet Spinning)という方法で作られています。
前回の記事でフラックスという植物がリネン糸の原材料であるということ、その加工方法が出来上がる糸の品質に大きく影響するということを述べました。
“リネン糸は潤紡績(Wet Spinning)という方法で作られています。” の続きを読むリネンの糸を作るには原材料となるフラックスの加工がとても大事です。
エップヤーン有限会社のサイトのトップに「当社はリネンの専門家です」と書いておりますとおり、当社の主力商品はリネンのニット糸です。
このリネンについて当ブログで過去に何度かご説明してまいりましたが、今回は再びイラスト入りで説明を行いたいと思います。
リネン糸の原材料はフラックスという植物で亜麻科の一年草です。
グーグルの画像検索で「亜麻」と検索してもらうと非常に綺麗な青紫の花が沢山表示されます。
このフラックスの花が咲くのは夏の間の1~2週間ほどの短い期間で、しかも日の出から数時間という短い時間帯だけです。そのためフランスやベルギーなどのフラックス産地ではこの貴重な花を観覧するためのツアーなどが組まれて観光化されています。
花の季節が終わり、秋になって葉が落ちはじめ茎が成熟したころにフラックスは収穫されます。
栽培状況の良いフラックスであれば丈が70cm~90cmほどになります。
このフラックスの茎の部分が主にリネン100%で紡績される糸の原材料となり、一等亜麻(いっとうあま)と呼ばれる繊維の長い上質な原料が採取できるのもこの部分になります。
収穫されたフラックスは束ねられて一旦土壌に寝かされ、そこで土壌のバクテリアなどの力を借りて熟成されます。これはRetting(レッティング)という工程で、繊維を柔らかくほぐしてあげるためにとても重要な意味を持っています。
このときの土壌の色が亜麻色といわれるリネン独特の生成りの色目に影響します。黒っぽい土壌であればリネンはグレーがかった色になり、茶色い土壌であれば黄土色に近いベージュになります。
この工程はやりすぎるとフラックスが傷んでしまい場合によっては腐ってしまうので、熟成度の見極めが大切で熟練の職人の目利きが必要になる部分です。
ちなみに土に寝かせず水を溜めたプールにフラックスを入れてレッティングする方法もあり、このやり方であれば土壌の色目の影響は受けないのでリネンの色はフラックス本来の黄金色に仕上がります。「亜麻色の髪の乙女」という言葉の亜麻色はベージュではなくてこの黄金色のことだという人もいますね。
レッティングの済んだフラックスはスカッチング(Scutching)という工程に進みます。
これはフラックスの繊維を叩いて表皮部分の硬い殻を除去する作業で、ここで残った繊維の長いフラックスは一等亜麻として扱われ、脱落した殻や繊維の短いフラックスはコットンとの混紡糸などにブレンドする用途で用いられます。
このスカッチングを施された一等亜麻の状態でリネン糸に紡績することも出来ますが、ここから更に細く長い繊維だけを選りすぐって取り出し繊維をきれいに整えるハックリングという工程を加えると、紡績されたリネン糸はもっとしなやかで美しく仕上がります。
イラストのように針状の突起が沢山並んだローラーにフラックスを通し、櫛をかけるようにして短い繊維を脱落させます。
このとき落ちた短い繊維も二等亜麻として用いられます。二等亜麻だけでもリネン100%の糸は紡績できますが、一等亜麻に比べると糸の均一性が低いのでムラやネップが多く、手触りも硬くなります。
ハックリングされた一等亜麻はしなやかで毛羽も少なく美しい光沢をもったリネン糸に仕上がるので、当社では基本的にこの原料しか使いません。
お客様のなかにはもっと野生的でムラ感の強いのが麻の魅力であると感じられる方もおられるので、状況に応じてスカッチングだけを施された原料や二等亜麻などを用いる場合もあります。
いずれにしても、必要とされるスペックに合わせて適切に原料を熟成させることや、スカッチングやハックリングなどの技術の良し悪しが出来上がりのリネン糸の品質に大きな影響を与えるので、この部分に原料メーカーがどの程度ノウハウを持っているかということが非常に重要なわけです。