当社の主力商品は春夏素材のリネンとコットンです。
正直なところ一年中その2素材を販売しているといっても言い過ぎではありません。
会社を創業してから18年間、自社の持っている強みに特化してきた結果そうなっています。
しかしながら、決して冬物素材を意図的に企画しなかったわけではなく、出来ることなら上質なウール素材を手がけたいと常々思っておりました。
けれども中々そう出来なかった業界の背景があります。
横編みニット市場向けに糸を販売しているメーカーはまだまだ沢山あります。
その中でもウール素材については紡績メーカーが直接アパレル企業に商品を提案・提供するという商流があり、我々のような中間加工業者をあまり必要としないビジネスモデルが出来上がっています。
それに反してリネンやコットンの糸のほとんどは元々織物用途に合わせて設計されていることや、トップ染めのミニマムロットが大きくセーター用途ではなかなか消費しきれないことなどいくつかの理由があって、横編みニット糸としては本来不向きです。
特にリネンについては横編みニットで問題となりやすい斜行という現象が起きないように物性をコントロールする必要もあり、紡績メーカー単体で織物用の糸をニット糸に加工することが難しく、当社のような小規模な企業にも活躍の場があります。
つまり、
ウールは紡績屋さんがニット糸の完成品を直接お客さんに提案できる。
リネンの紡績屋さんはニット糸を作るのが苦手。
という背景があって当社はリネン糸の加工に強みを持つことが出来たわけです。
そんな当社が今回ついにウールの糸を企画しました。
たまたま横編みニット糸をほとんど手がけていないウール紡績メーカーさんと取り組むことができたことがきっかけでした。
そのメーカーの社長に色々とウール糸作りの基本的なことを教わりながら、色々な試作に協力してもらえたことで、自分たちが納得いくものが出来たので今回ウール糸を販売するにいたりました。
今回使用したウール原料は18.5マイクロン。
マイクロンというのはウール繊維の細さを表す単位で数字が小さいほど細い繊維ということになります。
ユニクロや無印などがエクストラファインメリノと表示して販売しているものが19.5マイクロンなのでそれより少し細い繊維を使っているということになります。
その原料に酵素による防縮加工を施しました。
防縮という言葉の通り、縮みを防ぐ加工なので洗濯しても縮みません。
ウールの防縮加工には様々な手法があり、物によっては繊維表面を溶かしたり薄い樹脂を添加したりすることで防縮効果を得られるようにしたうえで、さらに光沢を出したり肌触りをすべすべにする加工などもあります。
けれども酵素の防縮加工はウールそのものの特徴を残すように考えられたものなので、肌ざわりやふくらみなどは原材料そのものからほとんど変化はありません。
18.5マイクロンのウールはそもそも肌ざわりがとても良く全然チクチクしないうえに、適度に膨らみもあってふわふわしているので、そのままの風合いを残してあげることが一番その魅力を引き出すことになるのだろうと考えています。
それにはこの酵素の防縮加工がうってつけだということですね。
その原料を1/72NMという細い番手に紡績し、3本に撚糸しています。
ニット糸で広く流通している番手は1/48NMですが、それよりももっと細い1/72NMという番手に紡績したうえで、双糸ではなくあえて3本撚糸にしました。
2本の撚糸よりも3本の撚糸の方が撚りが安定する上に、仕上がった糸の太さも均一になってニットの編地がとても綺麗に仕上がるためです。
原材料、加工、番手や撚糸など色んな要素に大満足の、当社がかねてから作りたかった理想のウール糸に仕上がりました。
カラーカードは既に出来上がっておりますので、ご興味のある方は是非一度ご連絡ください。