紡績 その3

様々な工程を経て出来上がった粗糸は引っ張りながら撚っていけば糸になります。

以上 完成。

ということなんですが、この引っ張りながら撚る工程を精紡といいましてここにも色んなノウハウがあります。

糸を説明する言葉に甘撚りや強撚(きょうねん)というものがありまして、これは精紡の段階でかける撚りの強弱の程度を表しています。
かける撚りが少なけれ甘撚り、多ければ強撚なんですが明確な基準があるわけではありません。各社が自社の基準に従って決めていますので、中にはちょっとだけ強撚のものをセミ強撚やら弱強撚などと呼んでいたり、ものすごく沢山撚りをかけたものには超強撚なんていかめしい名前をつけたりというものもあります。

通常甘撚りのものは柔らかくなり強撚糸はドライタッチでコシのある風合になります。

撚りのかかり具合は手触りや風合に直結するので、たとえば赤ちゃんの肌着は甘撚り、夏のタンクトップインナーは強撚というように紡績各社が最終用途に合わせて調整しています。

精紡のもうひとつの要素として粗糸の引っ張り加減を調整する工程があります。これはドラフトと呼ばれます。

粗糸の段階では仕上がりの糸の太さが確定しておらず、どれだけ引っ張って伸ばすかで最終的な糸の太さ(番手といいます)を決めていくわけです。

言い換えると、最終的な番手は粗糸を作ったあとからでもある程度調整できるので、たとえばあるお客様は18番手が欲しいし別のお客様は20番手がご希望ですよという時に、どちらにも出来る粗糸を用意しておくことで粗糸までは一括で生産して効率をあげることが出来るわけです。

ただし、20番手用の粗糸で100番手を引くのは無理なので調整の幅はあくまでもある程度に限られます。

また、ドラフトの段階で引っ張り加減を随時変えていくことで部分的には18番手、部分的には22番手というふうに糸の番手に凹凸を加えていくことも出来ます。これがいわゆるスラブ糸と呼ばれるものの基本的な作り方です。

このようにドラフトで粗糸を引っ張って伸ばしながら撚りをかけたものが紡績糸としての一先ずの完成形になります。

紡績糸をベースに様々な組み合わせで撚糸や染色を施していくことで糸のバリエーションは広がっていきます。そこからがようやく我々の出番になるというわけですが、これについてはちょっとやそっとでは語りつくせないのでまたボチボチ。。。

ということで、綿紡績の主な工程を3回にわたってつらつら解説してみました。まだまだ書ききれていないことが山のようにありますが。。。

まとめると、

ワタを混ぜて大まかなゴミを除去する(混打綿といいます。今回はあえて説明を省きました)→余分なワタを取り除いて繊維の方向を揃える(カーディング)→繊維を更に平行に整える(コーミング)→整えたスライバーを束ねて伸ばして混ぜる(連条、ダブリング)→出来上がった粗糸を引っ張って撚りをかける(精紡)→単糸の出来上がり

という流れです。

綿紡績の大まかな流れについて私はエップヤーンを始めたばかりのときに父親から教わりましたが、繊維の知識が全くなかった私にはまるっきりチンプンカンプンでした。
その後、紡績工場さんや繊維の展示会に行き、また紡績メーカーの営業の方が商談に来てくださった時に色々と質問して覚えたことの方が知識としては圧倒的に多いです。

私の拙い文章力のために分かりにくいところも多く、繊維の関係者でない方々には想像しづらい部分も多々あったかと思いますが、糸を作るにも色々な手間や技術が必要であることと、メーカー各社見えないところで色んな技術の向上を図りながら糸を作っているんですよということが伝わればと思います。

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