今回は当社の事業を業界内でどう差別化していくかということについて書いてみようと思います。
内容が非常に大切なテーマなので、おそらく2回に分けて書くことになるかと思います。
このブログでも時折触れてきたとおり、日本国内の紡績や撚糸、染色の工場がここ数年でどんどん廃業しております。
それぞれの廃業には個別の理由があるのでしょうが、根本的な理由はやはり不況だと思います。
この30年を振り返ってみても、ユニクロや無印良品、H&M、ZARAなどの世界的な台頭によって消費者の方々は質が良くて安価なアパレル製品を購入出来るようになりました。
かつてはニットセーターは1着10,000円以上の値段が当たり前でしたが、今は3,000円~4,000円も出せば十分に良いものが買えるようになったわけです。
分野が違うので参考にするべきではないのかもしれませんが、吉野家の牛丼の価格が1990年代には1杯400円程度で、一度2010年頃に280円になり、現状380円に戻ってきたことを見ると、アパレル製品の販売価格はこの間に急激に下がった印象です。
平成という短い時代のなかで洋服の平均的な価格は半値以下に下落していった感じでしょうか。
ユニクロや無印良品その他大手インターナショナルアパレルの製品のほとんどが中国やASEAN諸国で製造されていて、これは当然ながらその地域の製造コストが安いためです。
その地域の製造コストが安いというのは、そもそも人件費や光熱費などのインフラコストが安いことに加えて、大量生産に適した巨大施設で商品が効率的に製造されていることや、原材料も大ロットであれば安く仕入れることが出来るということもその理由です。
10万着作れば4,000円の販売価格、3,000着作れば10,000円の販売価格になるという感じですね。
そういったわけで、ユニクロや無印良品などで4,000円で売られているセーターは品質が低いから値段が安いわけではなく量産コストが下がったことで安くなっているので、10,000円のセーターと比べても品質的にそれほど大きな差が無かったりします。
では日本国内で10万着のセーターを作れば4,000円で販売できるのかというと、実際に原材料から一貫して日本国内製造で10万着作成して販売しようとしても、そもそもその製造キャパシティは無いため不可能だと思います。
仮に作れるとしても、海外であれば企画から販売まで6ヶ月で出来るものが、国内だと2年前から製造し始めなければ納品できないなど、なにかしら大きな制限があって結局現実的ではないでしょう。
当然1着4,000円のセーターの方が10,000円のセーターよりも売れるので、商品が売れなくなったアパレル企業は苦戦するし、各仕入先にコストダウンを強く要求するようになる。
そうなると納品している製造メーカーは最終的には自社の利益を削らざるを得なくなるので、経営が圧迫されて次第に廃業に追い込まれていく。
これが昨今の繊維産業によく見られる傾向ではないかと思います。
そうならないように日本国内の多くの工場は小ロット多品種で高付加価値の製品を生み出すことに活路を見出すことになっていくわけです。
ここで間違えてはいけないのは、世の中に1着4,000円のセーターが流通するようになったから10,000円のセーターが相対的に高級品のように扱われるようになっただけで、従来どおりのやり方で10,000円のセーターを作っていても高付加価値にはならないということです。
従来よりもっと何かに特化したものでなくてはいけません。
たとえば原材料が非常に希少で10万着分どころか1年間に3千着作る分しか収穫できない、といった材料であればそもそも10万着のアパレル商品と競合することのないものが作れるでしょうし、10日で1着しか作れないような複雑で凝ったものを作れば大規模工場で再現できないものも作れるかも知れません。
けれどもこれはおそらく10,000円をはるかに超える販売価格の商品になってしまうでしょう。
そういったことから、高付加価値を謳うにあたって単に希少価値をアピールするだけの物では難しいのではないかと思います。
では何がその違いを生むのか。
私自身はそれについてスピードがひとつのキーワードではないかと考えています。
続きは次回。