古い道具にまつわるエピソードを聞くのが楽しい。

先週の水曜日、愛知県一宮市で毎年開催されるヤーンフェアという展示会に行ってきました。

国内の多数の繊維関連企業が出店されているので情報交換や交流の場としては利便性の高いイベントです。

しかし、今年は新型コロナウイルスの影響で来場者も少なく急遽出展を取りやめる企業まであって、賑わいという点では物足りない印象でした。

今回は当社の商品企画担当者一名も同行し、夜は出展者や地元のメーカーさんたちと食事に出かけて楽しい時間をすごすことが出来たので出張としてはとても有意義でした。

けれども、コロナウイルスの影響も含めて現状のアパレル不況があるので、出展者ばかりがブースに立っていて来場者の少ない会場を眺めながら「まるで我々の業界の現状を可視化しているかのようやなぁ」としみじみ感傷に浸ってしまいました。。。

それはさておき、

展示会場を後にしてホテルに移動してから夜の食事まで少し時間が空いていたので、近くをブラブラと散歩していたらホテルの2軒隣にとても趣のある古いビルが建っていました。

外から窓越しに中の様子を見てみるとどうやら反物や糸など繊維関連のものが並んでいる。

外には看板が掲げられていて「Re-TAiL」という名前らしい。

気になって入ってみたところ、このビルは尾西繊維協会ビルという名前らしく元々は繊維関連の組合が使用していた建物で、今は複数の繊維関連企業が情報発信の拠点として運営しているとのこと。

各階に生地屋さんや仕立て屋さんなどいくつかのテナントがあります。

館内の壁には各種イベントの告知のなどが掲示されていたのですが、そのなかの一つに「古いミシンお譲りします」というものがありました。

気になってそのテナントを訪ねてみたところ、個人で洋服の修理を行っているお店とのこと。

そこでご紹介いただいたのがこの中古ミシン。

私自身も同行した社員も縫製業を経験していないので、この機械がどれほど貴重なものなのかはさっぱり分かりませんし、どういった用途に向く機械なのかも分かりません。

なんとなく本縫いのミシンだなということが分かるだけでした。

けれども過度な装飾もなく工業的でシンプルなデザインの、おそらく丁寧に使われてきたであろう良く手入れのされたこのミシンを見て、「あれ?これはうちに来るべきものなのかも」という気持ちがふとよぎりました。

そこで店主さんにこのミシンがどういった成り行きでここで売りに出されることになったのか、詳しく聞かせてもらいました。

店主さんが仲良くされている仕立て屋さんのところで長らく使われていたこと、

仕立て屋さんが自分で使いやすいように機械を改造している箇所のこと、

仕立て屋さんが高齢になり引退してこのミシンを手放すことを決められたこと、

それを軽自動車に積んでここまで運んできたこと、

いろんなエピソードを聞くうちに、そんなに大事にされてきた機械ならまだまだ使ってあげなければという気持ちがどんどん膨らんできて、思わず「これ買います」と言ってしまいました。

正直なところ今はまだ使い方も調整方法もよく分かりませんが、とにかく大切に使ってみようと思います。

当社には古いオーバーロックのミシンがあり、時々調子が悪くなったときに整備に来てくれる職人さんがいるのでその方に色々と教われば何とかなるかなと。

そして調整が済んだら何かを縫って身につけてみたいと思います。

昨今インターネットなどで物が簡単に買えるので私自身も頻繁に利用します。

けれど、たまにはこんな風に物と出会ってその物語を聞くことで成り立つ買い物があるのも良いなと思います。

「買い物」自体を楽しむ

ということがあるはずだなと改めて実感しました。

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