特殊番手のサフィランリネンを使って作られているものとは。

2022年春夏素材のプロモーションが始まりつつあります。

コロナウイルスが来年の春商戦にどう影響するか全く見通せないところですが、よく考えたら過去をさかのぼってみても翌年の春の見通しなんて誰も語ってくれたことは無かったので、今年も例年と同じく魅力のある新商品をご用意してご提案していくのみです。

ということで新たなご提案の一つがこれ。

サフィラン社のフレンチリネン、特殊番手。

来期に向けて麻番手22番という珍しい番手の糸を当社のラインナップに加えたいと思います。

麻番手22番というと毛番手13.2番。

いわゆる太番手と中番手の間くらいでやや太番手よりの感じ、なんとも微妙な太さです。

その微妙な太さが珍しくて良いでしょ!というご提案をしたいわけではありません。

今回の糸の魅力は豊かな光沢にあります。

この糸だけでなく、サフィラン社のウエットスパン糸は全て一等亜麻と呼ばれる上質な原料で作られています。

毛羽が少なくて光沢感が強いのが一等亜麻の特徴で、綺麗な糸が作れる原料なので普通は細番手に用いられます

けれども今回はその原料を太番手に用いている。

世の中にある太番手リネンのほとんどが二等亜麻と呼ばれる一格落ちの原料で紡績されていて、中にはドライスピニングで作られているものもあり、毛羽っぽくて光沢も無い糸がほとんどです。

そんな中、この光沢感バリバリの13.2番の存在はかなり貴重です。

双糸に撚糸すると6.6番になるので7ゲージでちょうど目が詰まる感じでしょうか。

元の番手が太いので編み目はかなりしっかりと立って、いかにもミドルゲージというようなニットらしいニット目が得られます。

このミドルゲージニットでここまで綺麗に光沢が得られる天然繊維はこれしかないんじゃないかと思いますね。

シルクで光沢のあるものだと正絹や絹紡ということになりますが、単糸番手でここまでの太さのものはなかなか無いので細番手の引き揃え編みということになります。

そうなると、良くも悪くも編み目の凹凸感が少なくなって、ミドルゲージのニットらしい感じは薄れてしまいます。

リネンの細番手を多本撚りにしたり引き揃えたりしても同じことで、綺麗なものは出来ても表情の豊かさは薄まります。

それに対して、太番手のリネンの場合元々糸自体にムラがあってニット生地に凹凸が出来るのに加えて、ミドルゲージのニット目の凹凸感も出るのでかなり表情豊かな生地が出来ます。

ともするとカジュアルになりがちなこのミドルゲージのリネンニットですが、サフィランのこの糸に光沢があるので上品さと高級感は全く損なわれません。

つまり、カジュアル+高級感の両立という絶妙な表現が出来るわけです。

この糸、元々何に使われているかといいますと、実は絵画用のカンバスの基布を織る糸なんです。

油彩画や水彩画に使うあのカンバスです。

絵画をされる方はご存知かと思いますが、カンバスの表面には微妙は凹凸があります。

あの凹凸を出す為にリネンのナチュラルなムラがピッタリなんです。

けれども糸が荒すぎては生地を織るときに傷が出やすいので、ムラは必要でありながら安定した品質でなくてはいけない。

そこでサフィラン社のリネンが選ばれるわけです。

カンバスの表面は絵の具を塗るために比較的マットな樹脂でコーティングされます。

なので、糸の光沢は全く必要とされません。

せっかくこんなにピカピカで美しい糸なのに、その個性を必要とされないフィールドでがんばっているんですね。

今回当社ではその縁の下の力持ちのような仕事をしてきた糸に日の目を見せてあげたいと思います。

ぜひ「カンバス地の下にこんなに綺麗で艶のある糸が埋もれていたとは!」と驚いてください。

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