極上の白Tシャツを作りたい!
という思いで開発を進めていた商品がようやく出来上がってきました。
今週から検品をスタートして、出来れば2月初旬に予約販売の形で発売開始したいと思っています。
商品の発送は2月中頃になる予定です。
詳細が決まったらまたインスタグラムやこのブログでもお知らせしたいと思います。
開発を始めた日付を見かえしたところ2022年の11月7日になっていたので、この品番もまた完成までに1年2か月かかったことになりますね。
今回の1枚を仕上げるために重要視した点は以下の通りです。
クリアでかつ透けない白
10オンス前後の肉厚の生地
柔らかな肌触り
十分な伸縮性
大人っぽい余裕を感じさせるデザイン
もちろんゼロトルク撚糸で歪まずダレないものにすること、生地の目を詰めて頑丈な製品にすることなど、東大阪繊維研究所としてのモノづくりの基準を満たした上でです。
この商品を作る最初の動機は「新しいフラッグシップを生み出したい」ということでした。
8.5オンスの定番アイテムと12オンスを超える「モンスターオンス」という2つの規格はすでになくてはならないスタンダードとなっていて、そこにもう一つ新しい柱を加えたいと考えたのです。
それは単純に「2つの規格の間を取って10オンスくらいのTシャツを作る」という安易なことではなく、今後のモノづくりの新しい判断基準になりうるモノのイメージでした。
まず作りたいものを大まかに想像したのち、実際に糸を作り始めたのが2022年の11月7日。
そこからデザインを決めて生地を編んでと開発を進めていくうちに、自分の中で「この品番作りを突き詰めていけば、ビンテージという言葉の意味が自分の中で定まるような気がする」という一つの思いが芽生えてきました。
ファッションや楽器、車など様々なジャンルでよく使われる「ビンテージ」という言葉。
この言葉がうまく日本語にできないなと感じることが多いです。
「古き良き時代の」という意味合いで使われる印象ですが、なんとなくそれ以上の意味が感じられる気がするのです。
辞書(weblio英和辞典)で調べると名詞としてはワインの収穫年や収穫量、上質なワインなどのこととされていて、形容詞として「優良な」「最盛期の」という意味や「特定の年代の」「古い型番や年式の」という意味も説明されていました。
この形容詞の用法が「古き良き時代の」のニュアンスになっている部分だと思います。
けれども、世の中にあるビンテージのものは当時最盛期を迎えた優良なものばかりでもないのかなとも思えるのです。
衣服や食器など生活にまつわるものは特にそうですが、いわゆる当時の「日用品」が今の時代のビンテージになっていないかと。
ほかにも当時の流行りものだったり、当時は見向きもされなかったものだったり。
特別じゃなかったものが、時代を経て特別になったというような。
今回のTシャツを作っていく中で、自分にとって曖昧なこのビンテージという言葉に自分なりの意味を持たせて、改めて解釈を深めてみたいと感じたわけです。
物は長年愛用されるなかでだんだん特別なものになっていくのだと思います。
それが個体としてのモノそのものなのか、モノではない何かなのか。
例えば1960年代に作られた状態の良いジーンズを今でも履くとなると、これは一般的なビンテージという言葉のニュアンス通りかなと思います。
それに対して300年続く老舗の和菓子屋さんがずっと繰り返し作り続けてきた羊羹はビンテージ羊羹とは呼ばないでしょう。
この場合はおそらくトラディショナルと表現するほうがニュアンス的に正しいのかなと思います。
けれどもそのスピリットはビンテージのものを愛することに通じる部分があるのではないかと思います。
洋服の世界では古い時代の衣類をコピーして新しく作ることがよくあります。
ビンテージ風とでもいうのか、デザインはその当時の感じにして今現在手に入る生地で新しく作る。
コピーする理由は「当時のものがなかなか手に入らないけれど、デザインがかっこいいから今でもほしい。ならば作ってしまえばいい。」といったところでしょうか。
そうやってできたものが当時のものと見分けがつかないほどに精巧にコピーされていたとして、ビンテージを愛する人にとってはこれはやっぱりまがい物ということになるのでしょうか?
それともこれは立派なビンテージものなのでしょうか。
おそらくまがい物扱いされることが多いのかなと思います。
たとえばこれが、当時のものを作っていたメーカー自身が作ったコピー品であっても、価格や価値に大きな違いが生まれてしまうのではないかなと。
けれども、私自身は「その時代のデザインを今復元したい!」というスピリット自体がとてもビンテージなことに感じるのです。
老舗の和菓子屋が繰り返し作り続ける羊羹が伝統の一品で、古き良き洋服を精巧にコピーしたものがまがい物とされるのはちょっと悲しすぎる気がします。
リスペクトの気持ちは共通なんじゃないかと。
正当な跡継ぎによって時代を経て受け継がれていくものが伝統だとして、全く縁もゆかりもない人がその心意気を受け継ぐことが伝統でないのは分かります。
しかしながら、伝統というものはただ同じものが引き継がれるのではなく、日々アップデートされて新しいものと古いものの調和の中で受け継がれていく、その積み重ねのことなのだと思います。
いわゆるビンテージものというものも、そのように受け継がれていっても良いのではないのかなと思うのです。
古いものを受け継ぎ新しい要素を積み重ねる役割を担う人が赤の他人でも構わんじゃないかと。
やや話がとっ散らかってきましたが、私の考えるビンテージというのは「古き良きもの」そのもののことだけでなく、その「古き良きものを今に受け継ぐ」ことなのかなと思うのです。
正統な後継者でなくても、どこの誰が作ったものかわからないものでも、それがかっこいいと感じたらそれを引き継ぐ。
このスピリットがビンテージなのではないかと。
もちろんこれが拡大解釈で、一般的に使われているビンテージという言葉から逸脱した考え方だということは分かっています。
なので、先にもお断りしたように「ビンテージという言葉に自分なりの意味を持たせて、改めて解釈を深めてみたい」という考えのもとにこのように述べています。
けれどもビンテージという言葉自体の意味を変えることはできない。
ということで、あれこれ考えた末に行き着いたのが「REBOOT VINTAGE」という言葉でした。
REBOOT(リブート)というのはパソコン用語で再起動のことですが、映画やゲームの世界ではある作品について新たな視点や解釈を加えて新たに作り直すような意味で使われる言葉です。
似たような言葉でリメイクがありますが、リメイクはコピーに近くて登場人物やストーリーは大きく変更されないケースが多いのに対して、リブートはキャラやストーリーだけでなく世界観まで変更されたりします。
けれども骨組みの部分というか、コアな部分では共通のテーマをもって作られる。
このリブートという言葉を使うことで、ビンテージに対する今の自分の解釈がすんなり収まるように感じました。
ビンテージものが作られた当時のスピリットを受け継いで、今の時代の技術や自分なりの解釈で新たに作る。
カッコつけて言うと「魂を受け継ぐ」みたいな感じです。
出来上がったものは似ていないけれども、着る人にビンテージのカッコよさを伝えていきたい。
これが「REBOOT VINTAGE」。
今回の白Tシャツを極めるという企画を進めるにあたって、ビンテージという言葉に対してずっと感じていた思いを整理したらこれにたどり着きました。
昔からあるパックTや軍モノの持っている何気ないカッコ良さをリスペクトしつつ、今できる最高の白Tを作る。
シンプルで飾り気がないデザインと、素材そのものの風合いをそのまま生地にした仕上げ方法。
昔ながらの作り方に近いものでありながら、今の時代の人に喜んでもらえるように創意工夫を凝らして作った一枚。
それが今回の品番「HOFI-027 REBOOT VINTAGE code01」です。
準備が整い次第発売いたします。
自信作です。
よろしくお願いします。