生まれて初めて台湾に行ってきました。
新しく始めるブランドの製品サンプルが出そろってきたので、その売り込みが主な目的でした。
今回滞在したのは台北市。
私の周囲にも台湾に行ったことのある人が多く、そのほとんどの人が好意的な話を口にしていたので今回非常に楽しみにして出発しました。
3日間滞在してわかりましたが、とにかく人が良い。
人が良いというのはお人好しという意味ではなく、人と人との距離感やちょっとした心遣いが素晴らしく、それが私にはとても心地よく感じられたということです。
台湾について話す時よく親日という言葉が使われます。これは台湾の人たちが日本に対して友好的で日本の文化やファッションなどに興味や関心を持っていることについて用いられることの多い言葉です。
しかし私自身この親日という言葉自体はあまり好きではありません。
日本人は得てしてアジアのいろんな国々に対してちょっとした優越感を持ち過ぎているのか、新日=日本にあこがれを抱いている国と思っている人が少なからずいるように思います。
中国が台頭するまではアジア圏でも突出した経済力を持ち、大きな人口があり、世界に有名な人材を多く輩出している日本はアジアのリーダーでいわば別格なんだという慢心に近い思いがどこかにあって、それにあこがれを抱いている国に対して少なからずの上から目線で親日という言葉を使っているように感じることが多いからです。
私自身も台湾に行く前に何人かの人と話をした際、台湾の人は親日らしいから仕事の話も進めやすいという期待を持っているという旨の話をしていました。
ここには日本人だから自動的に好かれるだろうという根拠のない甘えのようなものがあったように思います。
しかし、実際台北についてかなりたくさんの人と会話をし、いろいろと接してみた結果考えがかなり修正されました。
彼らの多くはとても親切で礼儀正しく慎みがあり、割と人見知りではあるけど一旦打ち解けると思っていることを一生懸命話してくれるという印象でした。
これ、日本人が日本人に思っているイメージに近くないでしょうか?
でもこのキャラクターは日本人だけの美点でもなんでもないのです。
確かに日本のカルチャーは台湾で人気です。私が日本人であることを言うと話題が広がりやすいのということもありました。
しかしそういったアドバンテージを除いても、些細な場面を通じて台北の街の人たちは私にとって心地よい接し方を自然にしてくれるものだと感じる場面が沢山ありました。
今回は事前のアポイントメントは少ししか取れずほとんどがアポ無し営業でした。
とある洋服屋さんに飛び込みで入ったときのこと、自分の商品のことや商売の話をいきなりし始めた汗だくの私に対して、いぶかしげな顔をしながらも話を聞きつつエアコンのリモコンの温度をこっそり下げてくれる店員さん。
違う店でも同じく飛び込み営業で入ってきた私の話が始まるや否や、何だろうこの人?というような顔をしながら店のBGMの音量を下げて対応してくれた店長さん。
予定があってすぐには話が聞けないと言いながら、銀行に入金しに行くだけなので15分だけ待っててくれればすぐに戻ります、と言って店を大急ぎで出て行って10分で戻って来てくれた店長さんもいました。
あるお店では商品の説明を終えた後、次の店のアポイントはありますかと聞かれたので特に決まってませんと答えると、もし近所でも良かったら友達がやっているお店があるから紹介してあげますと言ってお店の前まで連れて行ってくれた店員さんもいました。
仕事の場面以外でも、歩道を歩いていたところ前方に人が数名何かの話題で盛り上がっていて、こちらは重たいスーツケースを引きながら汗だくで歩いている。
歩道と車道には段差があるので車道に落ちないように歩道の端ぎりぎりを通ろうとしたら、話していたうちの一人が私に気が付いてみんなに道を開けるように言ってくれて通してくれる。
そのとき何か中国語で話しかけられたところをみると、私が日本人であるかどうかは関係なくそうしてくれたのだと思います。
これ、当たり前のように思うかもしれませんが、上海や香港ではほぼ経験したことのない状況だったので、すごく驚きました。
他にも細かいエピソードを上げるときりがないですが、とにかくいろんな場面で「あぁ、台湾の人たちって良いな」と思えることがありました。
そんなことがあり、親日というのは日本の文化が優れてて台湾の人を魅了しているんじゃなくて、日本人の話に台湾の人が真摯に耳を傾けてくれてるだけなんじゃないのかい?と思うに至ったわけであります。
どこの誰とも知らないオッサンがいきなりアポ無し入ってきてベラベラ話しだすという状況で、親身に話を聞いてくれる人がこんなに沢山いるなんて正直予想もしていませんでした。
洋服のブランドなんてものを始めたらまずはヨーロッパやら北米の展示会に出展して名を売る必要があるのかな?などと思ったりもしましたが、それよりまず台湾に来てみてこれは正解だったんじゃないかと感じました。
日本人と体形も近いから多分似合う人も多そうな気がするし、年中熱いからTシャツがいっぱい必要なんじゃなのかな?というのが台湾に来ることを選んだ理由でしたが今はだいぶ心境が変わりました。
また台湾に来ていろんな人と接する機会が欲しいので、ぜひこの国の人たちと商売がしたいです。