先月から当社に新しいパートさんが加わりました。
当社では従業員全員が撚糸機を回せるように、正社員パート老若男女問わず入社したスタッフ全員にまず糸の構造と機械の運転方法を教えます。
なので、新しい人が来ると基本の基本から説明することになり、これが教える方にとってはなかなか良い復習になったりします。
今回のパートさんにも私含めて各社員が持ち回りで色々と教えています。
せっかく基本的な知識をおさらいしているのでここでもチラッと書いてみたいと思います。
まずは糸の撚糸方向について。
ワタを捻って撚りをかけたものが糸です。
この撚りには2つの方向がありまして、図のように糸を縦にしたときに撚り目が右下がりになるのが右撚り。左下がりになるのが左撚りです。
右撚りはS撚りとも呼びまして、アルファベットのSの文字の真ん中部分が右向きにに下がっているから右撚り=S撚りと覚えればよいです。
左撚りはZ撚りといい、アルファベットのZの文字の真ん中部分が左下がりになっているから左撚り=Z撚りと覚えることが出来ます。
このほか右撚りのことを逆撚り、左撚りのことを順撚りと呼んだりします。
繊維業界でよくあることですが、業界によって用語が違っていてその都度翻訳していく必要があります。
主に綿紡績の昔からある会社の方たちは順逆の呼び方を使い、撚糸工場さんや毛紡績の方は右左やSZを使う印象でしょうか。
教わった環境によってそれぞれが別の用語を使っているので、時々それが災いして撚糸方向を全く反対にして加工してしまう等のトラブルになったりします。
左撚りが順撚りと呼ばれるもともとの理由には諸説ありますが、私が教わったのは綿花のワタそのものが左巻きにカールしていることに由来するというものです。
コットンの原料となるワタをほぐしていくと一本の繊維(ステープル)になります。その繊維は真っ直ぐではなく多少カールしたりよじれたりしていて、その天然のよじれ方向が左巻きになっているから、糸として紡績するときに左撚りに捻っていくとスムーズに紡績できるというのがその理由です。
最初に左撚りをベースに機械が造られたので、それ以降ウールを紡績する機械もリネンを紡績する機械も左撚りに糸を撚糸していく構造で作られるようになったということです。
さすがにこのあたりの知識はかなり時代をさかのぼったところにルーツがあるので、本当の話かどうか定かではありません。だれか本当のところを教えてください。(笑)
ちなみに右撚りの紡績つまり逆糸というのが必要になったのは、ミシンの構造と関係が有るとも教わりました。ミシン用の糸は紡績単糸を3本撚糸したものが多く、単糸が右撚りで3本撚糸はその逆の左撚りに撚糸します。
これはミシンで糸を縫いつけていくときに糸が左に捻られながら縫われていくため、3本撚りが右撚りになっていると糸が解けてしまい製品の強度が下がってしまうからということです。
いずれにしても、ほとんどの場合紡績単糸はZ撚り(左撚り)になっていて、それを双糸や三子に撚糸するときにはS撚り(右撚り)に撚糸するのが基本であるということを覚えておけばよいわけです。
このブログでも頻繁に書いていることで、糸の撚りバランスが合っていないと製品が斜行するということがあります。
斜行については以前に書いたこの記事を読んでもらえるとありがたいです。
この斜行というものには方向が有りまして、それは糸の撚糸方向に由来して発生します。
例えばZ単糸をS撚りに撚った双糸があるとして、それを天竺目で編んだセーターが右下がりに斜行したとします。
この場合はS撚りのトルクが強すぎることが右下がりの斜行の原因となります。
これを覚えるのも簡単ですね。アルファベットのSの文字の真ん中部分が右下がりになっていることを思い出せば良いわけです。
曲がったセーターをテーブルなどの平らな台に乗せて正面から見た時、セーターの裾の部分が向かって右下方向に下がっていたらS撚りが強すぎる。逆に左に下がっていたらS撚りが足りないということです。
撚糸バランスをあわせるということは、セーターの裾が真っ直ぐ水平になる状態にしてあげるということで、これは横編みニット用糸に求められる基本の基本スペックです。
この知識は基本過ぎて普段は考えることさえないです。
けれども、新人スタッフにとって分かりやすいように教えるには自分がしっかり理解していないといけないので、こうやってたまに復習しておくと良いなとこの記事を書きながら改めて思いました。
さて、明後日は「OTAIYA市 in 顕証寺」です。
一日だけのイベントなんですが、ちゃんと看板も作りましたよ!
写真に写っているのは今回新たに木星社から発売するリネンの手芸糸です。
フランス原産の一等亜麻だけで作ったリネン100%のコード撚り糸で番手は1/2.5NM。合太サイズというのでしょうか。かぎ針でいうと3/0~5/0号向けです。
編み物だけでなく、ラッピングや装飾に使えるようにカラフルなラインナップで10色揃えました。
中白染めという手法で染めているので編地はインディゴ染めのデニム生地のような発色になって、カラフルな色でもとてもナチュラルな色合いになります。
80m巻きで¥540(税込)。
OTAIYA市限定で10本まとめて購入される方には1本おまけでお付けしたいと思います。
10本は色がバラバラでも同じ色でもOKです。お好きな色を選んでいただけるように全色沢山用意してお待ちしております。
どうやら今年一番の大寒波がやってきているようで、当時はかなり寒くなるようです。ご来場いただける方は暖かい服装でお出でください。