前回のブログで当社の主力商品がリネンであることを書きました。
リネンを日本語で言うと亜麻(あま)です。
文字に麻の文字があるとおり、麻の一種で数千年前から繊維製品の加工原料として用いられていたとされています。
エジプトのミイラを包んでいた布がリネンで出来ていたとか。
本来リネンという言葉は糸や生地など二次的な製品に加工されたもののことを表していて、元々の草はフラックスという植物です。畑に生えているものはフラックスで、それを紡績した糸がリネンと呼ばれます。
当社が扱うリネンはそのほとんどが一等亜麻と呼ばれる原料をベースに紡績されており、一等などと偉そうに言うだけあって毛羽が少なく光沢があり、清涼感があるのに柔らかくてチクチクしないというなかなか魅力的な特徴を持っています。
日本の繊維製品に関する品質表示で「麻」と表記できるものにはこのリネンともうひとつラミー(苧麻(ちょま))があります。
実は日本で伝統的に馴染みのある麻製品の多くがこのラミーで出来ていて、近江上布や奈良晒、八重山上布なんかも主に苧麻で作られていたとされています。
以前奈良県にある某有名企業のアパレル部門のデザイナーさんに商品プレゼンに伺った際、ベルギーリネンと謳える商材を何か紹介して欲しいといわれたことがあります。
その企業はかつて奈良晒の生産を主な生業としていた企業で、今は多角的にいろんなジャンルの商品を手がけておられます。
そこのデザイナーの方から「うちの会社は伝統的に麻を主力商品にしてきた会社なので、リネン原料の産地には特にこだわりたい。だから今回はベルギーリネンのストーリーで商品構成をしたいのだ云々」というような要望を頂きました。
このとき「あれ?もしかしたらこの人は亜麻と苧麻を混同してるのかな?」とも思いましたが、ややこしい話になってもいかんと思ったのでそのときはフムフムと言いながら話を聞きました。
リネンもラミーも表記上は麻となってしまうのでこれは仕方の無いことだとは思います。
けれどもそれぞれの風合いはまったく異なっていて、毛羽が少なくサラッとしているけどやわらかさもあるリネンと、毛羽が多いけれども張りやコシがあってよりシャリ感の強いのがラミーといった感じでしょうか。
この二つ以外に衣料用途で用いられる麻にヘンプというものがあり、日本語で表記すると大麻(たいま)となります。
大麻というと禁止薬物いわゆるドラッグのイメージがあるかもしれません。主にドラッグとして使用されるマリファナも日本では大麻とされます。
けれどもヘンプとマリファナでは麻酔の成分に違いがあり、ヘンプには麻薬としての幻覚効果や陶酔性のある薬効成分が無いため衣料品や食料品の用途で一般的に流通しています。
マリファナも医療用で麻酔や鎮痛剤としての薬効が認められているので、一部合法的に日本国内への輸入が始まっているようです。
衣料用途の大麻となると今のところヘンプの事を指します。
ヘンプは成長スピードが早く一年に数回収穫できるので、汚染土壌の有害物質を吸収させるのに使われていたり、紫外線カット率が高いので天然のUVカット素材として注目されていたりしますが、いかんせん肌触りが硬くてチクチクするので一般衣料品に使われることは少ないです。
ちなみに中国の人民解放軍の夏の軍服は主にヘンプで作られているらしいです。軍人には「チクチクするから嫌なんですよね~」とか言わせないよ、ということなんでしょうか。
日本でも大麻はかなり古くから使われていて、神事に使われるしめ縄などにも大麻が用いられたりします。
これ以外にもうひとつ、コーヒー豆の輸送用袋などを織るための糸に用いられるジュート(黄麻(おうま))というものがあります。これも指定外繊維として表記される麻です。
繊維が太く頑丈なので主に資材用途で用いられます。天然繊維であるため絶縁性があり、電線などを束ねるロープなどが作られていたりもします。
このヘンプとジュートは繊維製品の品質表示上は麻と表記することが出来ず、「指定外繊維」というカテゴリーに入れられます。この根拠については正直まったく知識が無いので誰かご存知の方がいれば教えてくださいませ。
まとめると
リネン 亜麻 あま 日本の繊維製品には麻表記される
ラミー 苧麻 ちょま 日本の繊維製品には麻表記される
ヘンプ 大麻 たいま 日本の繊維製品には指定外繊維表記される
ジュート 黄麻 おうま 日本の繊維製品には指定外繊維表記される
これら4つが主に日本国内に流通している繊維製品用の麻となります。
チクチクしなくて光沢があって、清涼感があるのに柔らかさも感じる。このリネンの風合いが夏のニット用素材に良く合うので、当社はこのリネンを主力に据えていろんな商品を販売しております。
今回は麻にも色々な種類があって、その中でもリネンがお勧めですよ!というお話でした。