糸と生地のプレゼンでニューヨークに来ております。
毎回日曜日の午前中に到着して昼からはマーケットリサーチに出かけます。
けれどもここ数年はあまり目新しいものもなく、リサーチというよりもまるで南極基地の定点観測のような気分です。
あまりにも変化に乏しい。。。
わずか3時間ほどうろうろしただけですが、「またこれか」というデジャブのような感覚の連続に悪酔いしそうでした。
デザインや素材にもこれといった工夫はなく、安いものは見た目も安く素材も安い。
それなりにお高いものはそれなりの素材で、ネームタグには有名なイタリア糸のメーカーの名前がブランド名と併記されているか、カシミヤだのスーピマコットンだのと書かれているだけ。
わざわざ織ネームまで縫い付けるほどスーピマコットンは特別なものでしょうか。
少なくとも自社顧客にスーピマコットンをスペシャルだと感じる人がどのくらいいるか、アンケートなり採っているのでしょうか。。。
と、いきなり愚痴っぽくなってしまいました、ごめんなさい。
しかしそんな状況です。
日系香港商社の香港人スタッフと一緒にリサーチから晩御飯まで毎回一緒に行動しているので、その都度景気や経済の話をします。
彼の話を聞いていても香港をはじめとして世界各地のアパレルビジネスが軒並み不況で出口が見えない感じです。
まるで国内の糸やニット産地の方々と話をしているような気分になり、これもまたデジャブのようだと思うばかりでした。
ものが売れなくて売れ残るから、その分廃棄コストや倉庫代がかかる。
低い販売消化率で高い利益を上げないといけないから結局はコストを下げて売値は下げずという状況になり、その分当然ながら品質は下がる。
悪循環ですね。
状況が悪いとみんな色んなことにしり込みをしてしまい、挑戦もせず無難な戦略に終始してしまいがちになります。
そしてどこかの誰かがちょっと調子良さそうだと聞くと、すぐにそれを真似してみたりします。
けれども付け焼刃で人の真似をしても結局上手くいかなかったりして余計に悪い方向に行ってしまう。
EVERLANEというアパレルが製品のコストをオープンにすることと通販に特化して低マージン販売で販売することで伸びている。
これを聞いた他のアパレルも開示できるコストを開示して、Eコマースの部門を立ち上げて同じようにやってみようとなる。
けれども元々実店舗もあり高マージンの価格設定をしてしまっているので、Eコマース用だからといって極端に値段を下げられない。
高マージンだからコストをフルオープンにすることも出来ないので、開示できそうなコストだけオープンにする。
例えば商品の運送距離を縮めて化石燃料の使用量をどれだけ抑えましたよ、とかの微妙な数値を開示する。
そんなメッセージが心に響く人はごくごくわずかなエコ原理主義者だけなんじゃないでしょうか。
こんな状態だからこそ、アパレル企業に対して我々のような素材メーカーから新しくてわくわくするような提案をしていかなければいかんなと強く思いました。
実際当社のような零細企業から提案できることなんて限りがあります。
それでも、もっとこうしたら面白いのにと思うこともあります。
おそらくそれをプレゼンしてもすぐに良いね!となって簡単に採用されることもないでしょう。
けれども、現状を変えたくて思惑が一致する人と出会うかもしれないし、分かりやすく説明することでその気になる人もいるかもしれません。
なので、結局こちらは前向きでポジティブにいくだけです。
こちらはこのプレゼンのために色々と新しい商品も作り、いろんなアイデアを考えて来ているので全力でワクワクしてる状態ですからね。
いまは月曜日の朝。今日から4日間、楽しみながらしっかり自分のやるべきことをやる。
行ってきます。