先週は中国出張でした。
確か5年ぶりの中国。
当社がスタートして今年で18年、繊維業界やファッション業界もずいぶん様変わりしました。
会社を創設してしばらくたった頃、ある客先の方に「これからは中国で糸を作る時代になりますよ、エップヤーンさんも中国に進出されてはいかがですか」といわれたことがあります。
糸屋をはじめたばかりで素材のことや糸作りはおろか商売そのものに全く無知だった私にとって、海外工場での糸生産なんて何の話をされているのやらという感じでした。
当時既にいろんな糸屋さんやニット工場さんが中国に進出し、中にはその後日本国内の会社を閉めて完全に中国に軸足を移されたところもあります。
そこからさらに時代は進み昨今では中国の生産コストも上がり、ヴェトナムやカンボジアなどASEAN諸国へ生産拠点を移すところも増えています。
最終的にはアフリカ大陸での生産も必要になるだろうと唱える方もおられます。
いずれにしても、安価な労働賃金で人をこき使うつもりの人がこの業界にはまだまだいっぱいいるというわけですね。
さてその中国。
私が何年か前に訪問したテキスタイル系の展示会では、日本やその他の国では見慣れないシーンを沢山見ました。
展示会のブースで普通にお弁当を食べている人がいる。
出展者が地べたに座って休憩している。
ブースにゴミや食べ残しの入ったビニール袋が放置されている。
それ以外にも、ブースそのものがあまりオシャレでなかったり、出展者の服装も中々に奇抜であったり。
今回糸の展示会を見に行くにあたって、そのあたりがどのように変わったのかを楽しみにしていました。
結論からいうとばっちり改善されてました。
会場もきれいに設営されていてブースもオシャレでみんなの服装もピシッとしている。
もちろん弁当を食べてる人は見かけませんでした。
なるほど中国も変わったんですねというのが率直な感想です。
先月日本で行われていた糸の展示会と比べても、会場の雰囲気は断然中国のほうが洗練されている印象でした。
並んでいる糸については特に代わり映えするものはなかったです。
値段の安いものは見た目もチープで、高級なものにはカシミヤとかシルクが使われている。
イタリアにしても日本にしても同じことで、繊維業界は成熟産業なので毎年斬新なものが生み出されるようなことはもはや考えにくいです。
中国もかつては巨大装置の導入による価格破壊を中心に多くの話題を提供してきました。
けれども、それもほぼ定着してしまいここ数年センセーショナルな変化はないようです。
モノが新しくないということをカバーするには見せ方で変化を付けるしかないわけで、その点はいまだにイタリアのメーカーが断然優れています。
展示会や販促資料がオシャレでカラーカードに貼られている色も美しい。
展示会に並べられる編地の配色や素材の組み合わせによる柄出しなんかも洒落ていて、ファッションの楽しみ方が上手なんだなというのを感じます。
見せ方という点では中国の展示会はまだまだイタリアには及ばないなという印象でした。
けれども日本で行われている糸の展示会はそれよりもっとひどくて、そもそも見せ方で工夫しようという意図さえ感じられないので、その点では中国の展示会のほうがより楽しかったです。
日本が優位性を持っている分野がどんどんと少なくなっているなとつくづく感じますね。
その中国でさえ労働コストの上昇による人手不足や高齢化などの問題で繊維産業に従事する人口が減っていて、今後繊維の分野は東南アジアや中東などの国々に取って代わられる部分が増えていくといわれています。
諸行無常ですね。。。
これからちょくちょく中国に出張に出ることになりそうなので、成熟期に差し掛かった中国の繊維産業が今後どう変化していくのか楽しみにみていきたいと思います。