相変わらず糸の斜行のトラブルに関する相談がいっぱいです。

先週頭から風邪をひいてしまい鼻づまりでボーっとする日が続いてました。

熱もなく食欲もあったのでもしかしたら花粉症デビューなのか?とも思っておりましたが、昨日あたりから鼻もスースー通るようになって体のだるさもなくなったので、どうやらただの鼻風邪だったようです。

鼻もすっきりしたのでしばらくぶりにブログを書いてみたいと思います。

当社では主にニット糸を製造・販売しており、社内に撚糸機や編み機があるために撚糸に関するご相談を受けることがしばしばあります。

アパレル企業の方や糸商さん、撚糸工場さんや紡績メーカーさん、この2~3週間の間にもいろんな方から様々な質問を受けました。

とあるアパレルさんからは風合いをドライにしたいから撚りを強めたいというリクエストがありました。

それには斜行のリスクが伴いますよとご説明するも、それを何とか斜行しない程度に撚りを強められないかとのこと。

さてこの編地、右下がりに見事に斜行しております。

この糸の撚りバランスがぴったり合うのは1メートルあたり約320回で、それに対して350回撚糸したらこうなります。

約10%のズレです。

この歪みを許容していただけるのであれば撚りを強めて入れますよ、ということになるわけです。

おそらくこれを天竺の企画でOKするアパレルさんは少ないでしょう。

お客様の方で糸の撚りを強めたら編地の風合いがドライになるということはご存知でも、そうすると編地が歪んでしまうことはご存知ではないケースが多いです。

これを電話だけで分かりやすくご説明することは案外難しく、とりあえず2~3キロ作ってみてくださいということになって、それを編んだ結果斜行の問題でボツになるパターンがほとんどです。

当社では小型の撚糸機を所有しているのでこういったリクエストにも出来るだけ答えるようにしていますし、それ以前にそのリスクをしっかりご説明するようにしています。

けれどもこれが大型の撚糸機で試作する工場さんだと2~3キロの試作を断られたり、海外の糸メーカーだとそのリスクをしっかり説明してくれなかったりして結局後々大きな問題になったりすることがあります。

アパレル企業のスタッフの方がこのような知識を持ち合わせていないことは仕方がないことなので、我々もできるだけご要望にお答えするために他の糸を提案したり、元の糸から加工を変えたりすることをします。

けれども意外と紡績メーカーさんや糸商さんなど、糸の販売を専業にしている方々も撚糸の知識を持っておられないことが多かったりします。

ここ最近当社にあった問い合わせのうちからいくつか抜粋してみました

紡績メーカーさんからの質問
自社で紡績しているMVSという方式の糸があり最近好評を頂いている。横編み用に撚糸したいけれどもMVSは斜行が止まりにくいと聞いているが、どうやったら撚りバランスをあわせられるだろうか?

回答
MVSでもその他紡績機でもやることは同じです。撚りバランスの合うポイントを見つけてその通りに撚糸すれば斜行は止まります。

撚糸工場さんからの質問
コットンアクリルの混紡糸はアクリルのセット性能で斜行が止められるとよく言われているが、50%アクリル50%コットンの混率の糸で既に撚りバランスが合っている糸同士をさらに撚り合わせたらどうなるだろうか?

回答
当社では普段コットンアクリルをほとんど扱わないのではっきりとは言えないけれども、コットンが50%混紡されていて既に撚りバランスが合っている糸をさらに撚糸するならばおそらく斜行してしまうでしょう。

糸商さんからの質問
輸入糸のオーガニックコットンの20/2ECCを販売しているが、客先から20/3ECCにして欲しいとリクエストされた。けれども3本撚りは斜行バランスをあわせられないと撚糸工場に言われて困っている。3本撚糸は斜行を止められないのだろうか?

回答
原糸のデータがあれば3本撚糸でも斜行を止めることは簡単なので当社で試作をお受けしました。

糸を売って生業にしている方々でもこんな感じです。

紡績メーカーさんにしても糸商さんにしても元々大量販売を中心にされていて、ロットのまとまらない横編みセーター向けをこれまであまり手がけてこられませんでした。

ところが不景気が続き少ないロットでも対応しないと売上が稼げなくなってきて、横編みニットの市場に参加してきた結果、斜行という従来あまり経験したことがない問題に直面しているのでしょう。

お客さんの方でも紡績メーカーや糸商さんから安価な糸値を提示されて、安易に使って色々とトラブルになっているようです。

斜行の試験もろくに行わずロットごとの撚糸管理もしないで糸を作れば糸値は安価になるでしょう。

けれども値段が安い分、品質もそれなりになるのです。

すごく簡単なことなんですけれども、これを分かっている人がとても少ない。

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